Rの称号 [フィクション]
彼にどこか走りに行ってみたら?と
再々の提案があったので、さてどこへ?と思いながら
行きたくなったら、ものすごい行動力を発揮する人なのだが
若い頃ならばまだしも、そいう文化が無い私。
得意の妄想で、ツーリングに行った気分になって、楽しんでみようか。(笑)
* Rの称号 *
最近知り合ったライダー仲間に「週末見にきてみない?」と
誘われていたので、週末、サーキットに出かけることにしていた。
当日、曇り空。
「天気は持ちそうね~。」
今日は練習走行日と聞いている。
パドックには、色とりどりの大きなマシンと
搬送用のトランポが、たくさん並んでいる。
彼らはどこにいるのかしら?人が多くて解らないなぁ。
と、女は観客席に腰をおろして、走行開始を待ちながら
遠くをながめる・・・
誘われていたチーム員の彼は、腕の故障をかかえながらの
久しぶりの走行なので、少し心配。
ロードはタイヤ幅がハンパではないはね~と
興味津々に遠目に観察。
と、大音量の中そろそろ準備の整ったライダーから
練習走行がはじまる。
蜃気楼のように、遥か向こうからメインストリートを
爆音とともに、マシンと一体になった一人のライダーが走り抜ける。
「カッコイイ~。」
バイクは、女・子供のするスポーツではないなと
肝に銘じる瞬間である。
結局のところ、彼らの居場所を確認できずに帰路へ。
今日は久しぶりの遠出のために、女は一泊することにしていた。
天気はあいにくの雨模様となり、
山手の曲がりくねった舗装された林道の路面は、少し濡れている・・・
と思った瞬間、落ち葉の積もったコーナーに後輪をとられて
女の赤いバイクは転倒。
ガシャン・・・女と赤いバイクはガードレールに激突。
女は痛めていた膝を強打。
「痛い・・・」「誰か助けて・・・」
夕暮れの山道を通る車も、人影もない。
しばらくすると、1台のワゴン車が転倒した赤いバイクの前に
ハザードを点滅させて停車する。
そのトランポの中にはサーキットで見たマシンが積んである。
あっ、あの人、もしかして。
≪大丈夫、怪我は?≫と男がうずくまる女にかけよる・・・
「少し膝が痛くて」
≪病院に行く?≫
うんん・・・と女は首を横に振る。
宿泊予定の近くの宿までトランポで連れて行ってもらうことに。
部屋についた二人。
男は女の怪我の様子を見るために、
女のライダースーツを手際よく脱がせる。
長年の経験から、傷の手当てを心がけている男は、
宿のタオルで、座らせた女の膝を冷やしながら
≪少し赤くなっているけれど、大丈夫だよ≫。
女は納得しながらも、心配そうに膝を眺めながら
「あのーこれ・・・」と自分のバックからテーピングを差し出す。
黙って男は、手際よく女の膝にテーピングを施す。
≪これで、大丈夫!≫と女をなだめると、
女の姿をあらためて見ながら
≪ひゅ~、これはいい眺めだ・・・≫と男がひとこと。
なぜならば、ライダースーツを脱いだ女の姿は、
Tシャツと、下着一枚だけだったのだから。
「恥かしいからそんなに見ないで。」と男と女は笑いながら、
今日のサーキットでの一日について語り始めた。
※このお話はフィクションです。