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響かぬ願い。 [フィクション]

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心の中に期待と不安とあきらめがある。

それは、うす曇の空から差し込むピンポイントの光の筋を

手でつかむような、感じである。

どんな時にも、何があっても前向きに考えて進むことが

私のとりえだとしても、どうにもならない時もある。

唇をかみしめて、出てくる涙をこらえるのが精一杯・・・

言葉では語らぬ想いも届くことはなく、

身体の一部をそぎ落とされる、痛みを耐えるように

背中を丸めて眠りにつく。

 

終わりを告げる、柱時計の音も耳には入らず、ただ眠るだけ。

夢から醒めない奥深くに・・・二度と醒めない眠りに。

朝の来ない夜はないのに。


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タトゥーのある男 [フィクション]

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その人は、四半世紀近くも違う年齢にもかかわらず、
なぜか涼しい眼をしていつも遠くを見つめている。

茶髪でもなく、見た目、普通のどこにでもいる好青年である。

ただ、左の太ももには、サソリのタトゥー(刺青)がほどこされている。


最初に見たときには衝撃を受けたが、
話を聴いても、なぜそこにその紋章が必要であったのか

私には理解が不能である。


「負けないためのお守り・・・」だと彼は言う。


何に負けたくないの?
見えない敵と戦う葛藤が、どれほどの物なのか
私には解らない。


しかしながら、痛々しさの中にも何か「凛」とした
清さや奥深ささえ感じる。


「それでは温泉には入れないでしょう?」と言うと

すかさず「気にしていませんから~」とひょうひょうと
答えるその言葉には
まだ、初々しさが残っている。


不思議な男であり、その人もまた、GSX1300「隼」に
またがる若いライダーである。


※この内容はフィクションです。


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アナザースカイ・・・(もう一つの空) [フィクション]

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全国的に猛威をふるった、ゲリラ豪雨がまるで、嘘のように
透き通る青い空と、白い雲が広がる、夏空を見上げる。

あ~梅雨がやっと明けたんだ~~~。
爽快な気持ちが、胸いっぱいに広がった。


 ※この内容は、フクションです。


『 アナザースカイ 』

ある寒い夜のこと。
初めて手をつないだ時に、この人に守られたい・・
という衝動にかられた。

湧き出る期待感を抑えられず、
傍らに寄り添いながら、その手から伝わる温もりと
私には丁度の背丈に、彼の生きた歳月を
等身大に感じる・・・

 
 「お豆さんできていないね。」
と、つなぐ手を軽く握りながら問いかけると

 「グリップをそんなに強く握っては、ダメだよ…」
と、言いながら、つないだ手を握り返してくる。

よく考えてみれば、そぉである。強く握れば
すぐ腕が上がり、操作性は悪くなる。

バイク乗りの基本中の基本である。

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これから始まろうとしている事への期待と不安を
かき消すように、全てを包み込む彼の優しさ
はどこから来るのか?

僕にまかせて・・・

言葉ではなく、つなぐ手から伝わる
無言の絆が生まれ落ちる。

広々とした大地と澄みわたる空のような、
堂々としたなりわいは、自然な姿であり
彼に備わる天性の才能なのかと、想像を巡らしてまう。

さぁ、あなたの生き様を見せて・・・

私は心の中でつぶやきながら、その先に続く
物語の扉を開けようとしていた。

私の全てを見せる代わりに。



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催涙雨(七夕の雨) [フィクション]

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◎ 催涙雨 (七夕の雨)

 

七夕の日の雨を、催涙雨(さいるいう)と言うそうだ。


7月7日、年に一度だけ会うことを許された、
織姫と牽牛(彦星)が、雨が降ると、
天の川の水かさが増して、この年だけは、
会うことができず、
川面に映る姿に想いをはせる・・・
という、七夕伝説。

 

何とも胸がしめつけられる様な言い伝えである。

人の想いは伝わる・・・のだろうか?

 

会いたいけど、会えない・・・

 

行く気になれば、二時間ほどで行けるから
近いよ・・・という彼に

 

私の中では近くない距離である。

遠いよ、遠い。


近いと思うならば、来てみぃ~。

来えぇ~へんくせに!

と言い返せない、私がいる。


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私は不思議な魔法の粉を密かに精製する
(変な粉ではありませんよ!)

この粉がふりかかると、
どんな人でも
恋心にあかりが灯される。

 

そんな、不思議な魔力(?)を持っているからして、

振り向いてくれるはずなのに・・・


私のマジックの期限もそろそろ切れはじめたのか?

と思う、今日この頃。


さらに継続されるバージョンUPを図らねば・・・
と、駆け引きは続くのである。

 


さて、悪天候の今日、そんな雑念のかけらも無い
織姫と牽牛は会えたのだろうか?

織姫と牽牛が流す涙、催涙雨を感じながら
夜空を見上げると、切なくなるなぁ~。




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孤高の掟(おきて) [フィクション]

梅雨の長雨が続いて少し憂鬱な毎日
少し妄想の世界に・・・
  
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※この物語はフィクションです。
「孤高の掟(おきて)」 
運命的な巡りあわせから、
幾度となく愛の営みを重ねる度に
身も心もいつしか、彼一人だけの私になって、
愛し方のひとつひとつが記憶として
少しずつ刷り込まれていく。
 
吐息と鼓動を聞きながら
体温を感じる汗と羞恥の中で
見えない「束縛」という錯覚に支配される
居心地の良い幸せと、自由を奪われるという
M的な被虐な快感がいっぱいに、広がる。
 

他の誰とも違う、彼の愛し方は、
丁寧で癒やしの泉に満ち溢れている。
その泉の奥深くに溺れることを
許された「特別」に感謝したい。
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孤高のファイターが時折見せる
無防備に私は攻め込みながらも
愛おしさの余りいつしか、降参して
彼の哀しみの全てを受け入れてしまう。
 

傍らでスヤスヤと寝息をたてる
寝顔を見つめながら
いつしか自分も深い眠りの淵に迷い込む。
甘いアロマの香りと共に・・・
  
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幸せの青い鳥をはなつ、一人のライダー [フィクション]

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いつも誰かの背中を追い続けている私。
とにかくライダーの後ろ姿に惹かれてしまう。

私も旅立つことにします。南下がいいかなぁ~。
少し妄想の旅に出かけて見ましょう。



※ この物語はフクションです。


「 幸せの青い鳥をはなつ、一人のライダー 」


この見知らぬ最南端の土地をふらっと訪れた私の目の前に
一台の大型バイクが通り抜けた。
テールの角度が、やや鋭角な絶妙なマシンバランスから
乗り手のセンスがうかがえる。

その後ろ姿をしばらく、おでこに手をあてて眺めていると
そのバイクの主は道の先で軽快に綺麗にUターンすると
私のもとにあっという間に現れた。

「こんなところで知り合いのはずもないけど・・・」と心の中で呟くと

突然、目の前に現れた青いバイクのライダーはシールドを上げると
「バイクに興味があるの?」とひとこと。

女は「少し・・・」と答えると

男は「後ろに乗ってみる?」
とタンデムシートを指差して優しく微笑んだ。
彼の悪気のない誘いに自然に導かれるように
まるで最初から用意されている様な、その席に女もまたがる。

「少しスピードを出すからしっかりつかまって。」
という男の言葉に、女は慌てて広い背中にしがみつくと
アクセルを徐々に開けるライダー。
彼の腰に回す手に少しだけ力を添えて、
彼女自身の身も心も、しばしの時預ける。

一番好きな至福の時に酔いしれながら、
どこまでも続く夕暮れの道に消えていく二人。


羽を大きく広げ、大空を自由にはばたく鳥のように、走り続ける。

その人の目は、いつも道の先の遠くを見つめ
時に鋭く、時に愁い(うれい)を帯びて、出会うモノを魅了する。


女はこの青いマシンを扱う彼のすべてを知りたくなって
「あなたをもっと知りたい・・・」とつぶやいた
風に流される言葉が彼に聞こえたかどうか?

その先に始まる二人の物語に期待を寄せてしまう
その女もまたライダーである。

青い鳥を探しに・・・。


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Rの称号 [フィクション]

彼にどこか走りに行ってみたら?と
再々の提案があったので、さてどこへ?と思いながら

行きたくなったら、ものすごい行動力を発揮する人なのだが
若い頃ならばまだしも、そいう文化が無い私。
得意の妄想で、ツーリングに行った気分になって、楽しんでみようか。(笑)

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*  Rの称号 *

最近知り合ったライダー仲間に「週末見にきてみない?」と
誘われていたので、週末、サーキットに出かけることにしていた。

当日、曇り空。
「天気は持ちそうね~。」

今日は練習走行日と聞いている。
パドックには、色とりどりの大きなマシンと
搬送用のトランポが、たくさん並んでいる。

彼らはどこにいるのかしら?人が多くて解らないなぁ。

と、女は観客席に腰をおろして、走行開始を待ちながら
遠くをながめる・・・
誘われていたチーム員の彼は、腕の故障をかかえながらの
久しぶりの走行なので、少し心配。

ロードはタイヤ幅がハンパではないはね~と
興味津々に遠目に観察。
と、大音量の中そろそろ準備の整ったライダーから
練習走行がはじまる。

蜃気楼のように、遥か向こうからメインストリートを
爆音とともに、マシンと一体になった一人のライダーが走り抜ける。

「カッコイイ~。」

バイクは、女・子供のするスポーツではないなと
肝に銘じる瞬間である。

結局のところ、彼らの居場所を確認できずに帰路へ。

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今日は久しぶりの遠出のために、女は一泊することにしていた。

天気はあいにくの雨模様となり、
山手の曲がりくねった舗装された林道の路面は、少し濡れている・・・
と思った瞬間、落ち葉の積もったコーナーに後輪をとられて
女の赤いバイクは転倒。

ガシャン・・・女と赤いバイクはガードレールに激突。

女は痛めていた膝を強打。
「痛い・・・」「誰か助けて・・・」
夕暮れの山道を通る車も、人影もない。

しばらくすると、1台のワゴン車が転倒した赤いバイクの前に
ハザードを点滅させて停車する。
そのトランポの中にはサーキットで見たマシンが積んである。

あっ、あの人、もしかして。

≪大丈夫、怪我は?≫と男がうずくまる女にかけよる・・・
「少し膝が痛くて」
≪病院に行く?≫
うんん・・・と女は首を横に振る。

宿泊予定の近くの宿までトランポで連れて行ってもらうことに。

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部屋についた二人。
男は女の怪我の様子を見るために、
女のライダースーツを手際よく脱がせる。

長年の経験から、傷の手当てを心がけている男は、
宿のタオルで、座らせた女の膝を冷やしながら
≪少し赤くなっているけれど、大丈夫だよ≫。

女は納得しながらも、心配そうに膝を眺めながら
「あのーこれ・・・」と自分のバックからテーピングを差し出す。
黙って男は、手際よく女の膝にテーピングを施す。

≪これで、大丈夫!≫と女をなだめると、
女の姿をあらためて見ながら
≪ひゅ~、これはいい眺めだ・・・≫と男がひとこと。
なぜならば、ライダースーツを脱いだ女の姿は、
Tシャツと、下着一枚だけだったのだから。

「恥かしいからそんなに見ないで。」と男と女は笑いながら、
今日のサーキットでの一日について語り始めた。

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※このお話はフィクションです。


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