タトゥーのある男 [フィクション]
その人は、四半世紀近くも違う年齢にもかかわらず、
なぜか涼しい眼をしていつも遠くを見つめている。
茶髪でもなく、見た目、普通のどこにでもいる好青年である。
ただ、左の太ももには、サソリのタトゥー(刺青)がほどこされている。
最初に見たときには衝撃を受けたが、
話を聴いても、なぜそこにその紋章が必要であったのか
私には理解が不能である。
「負けないためのお守り・・・」だと彼は言う。
何に負けたくないの?
見えない敵と戦う葛藤が、どれほどの物なのか
私には解らない。
しかしながら、痛々しさの中にも何か「凛」とした
清さや奥深ささえ感じる。
「それでは温泉には入れないでしょう?」と言うと
すかさず「気にしていませんから~」とひょうひょうと
答えるその言葉にはまだ、初々しさが残っている。
不思議な男であり、その人もまた、GSX1300「隼」に
またがる若いライダーである。
※この内容はフィクションです。
2010-11-24 23:39
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